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研究室紹介

手嶋 吉法教授

研究室

(キーワード:形と機能、3次元幾何学構造、デジタルものづくり、精確な形状の立体模型)

 2012年4月に発足した新しい研究室です.機械サイエンスは,様々な可能性を秘めた魅力的な分野です.これまでの常識にとらわれることなく,常に新しいチャレンジを続ける研究室でありたいと考えています.以下は,当研究室の研究テーマの構想です.

1 幾何学を積極的に活用した機械設計(形と機能の研究)

 数学は未来技術の創出基盤と言えます.当研究室では,数学の中でも特に幾何学の積極活用により,革新的な機械の創製を目指します.

図1.ロータリーエンジン(写真はWikipediaより)
図1.ロータリーエンジン(写真はWikipediaより)

 歴史を辿ると,興味深い事例が数多くあります.有名な「ルーローの三角形」と「ロータリーエンジン」に言及しておきます.「ルーローの三角形」と呼ばれる幾何学図形を開発したルーロー(1829~1905, 独)は,数学者ではなく機械技師でした.ルーローの「機械サイエンスの為の基礎研究」が,彼の死後約半世紀経ってヴァンケル(1902~1988, 独)の「ルーローの三角形を内包するエンジン」の発明に繋がり,日本のマツダ社が改良を重ね,実用に耐える「ロータリーエンジン」として開花しました.ルーローがおこなっていたような「機械サイエンスの為の基礎研究」,ヴァンケルがおこなったような「幾何学図形を機械に活用する研究」,どちらも当研究室の主テーマにしたいと考えています.

(テーマの例) 多面体の転がり方に関する研究

図2.ねじれ12面体
図2.ねじれ12面体

 正多面体の中で面数最少の《正四面体》は,面角が鋭角であり,転がり難い多面体です.準正多面体の中で面数最多の《ねじれ12面体》は92面あり,面角が鈍角なので,転がり易くなります.多面体および床面の材質を変えると,接触面(あるいは線,点)における摩擦が変化し,同じ多面体でも転がり易さが変化します.各多面体の転がりの特徴を体系的にまとめる予定です.

 面数が多い多面体であっても,球の様に滑らかに転がることは出来ません.ところが,ある多面体を直線状に連結すると,非常に滑らかに回転するのです.このような「複数個連結した多面体」の転がり方について詳しく調べると共に,その性質を科学技術に応用する研究をおこないます.

2 パッキングによる空間構造の理論研究およびその工学応用

 当研究室では,マイクロサイエンスの理論研究として,結晶構造についても研究し,「機械サイエンスの為の基礎研究」をさらに拡充します.

(2-1) 球のパッキング構造

 単純立方格子,体心立方格子,面心立方格子に対応する球のパッキング構造がそれぞれ存在しますが,互いに異なる結晶構造です.3種類の球の充填構造を繋ぐ連続変形理論が最近初めて構築されました.当研究室では,このような理論研究をおこなう他,実際の球のパッキングが連続的に変形出来ることを実証する実験装置を開発し,さらにその工学応用を研究します.

図3.球のパッキング構造の連続変形理論(*1)
図3.球のパッキング構造の連続変形理論(*1)

(2-2) 円柱のパッキング構造

図4.円柱のパッキング(*2)
図4.円柱のパッキング(*2)

 円柱のパッキング構造は科学技術に応用されています.炭素繊維強化複合材料の3次元構造などです.しかし,棒状の物質や部材は炭素繊維以外にも様々あり,そのサイズ領域も様々です.それら各々に対して円柱充填構造を構成し,物性や強度等の諸特性を制御し,新しい材料としての可能性を探ることも重要な課題と考えており,当研究室と各専門家とで連携して研究をおこなう予定です.

3 精確な形状を持つ立体模型の研究開発

 現代のデジタルものづくり技術を活用することにより,精確な形状データに基づく立体模型の作製が可能です.これを様々な分野で活用することが出来ます.

(3-1) 触覚鑑賞用立体模型

 「視覚障害者が触覚で鑑賞するための立体教材」かつ「晴眼者が手にとって鑑賞できる立体標本」を開発するプロジェクトを実施してきました(*3).開発した模型は,数学曲面各種,多面体,結晶学教材,プランクトン骨格模型,惑星儀などです.模型の中には,最先端の研究を推し進める為に重要な模型もあります.今後,様々な分野の専門家と連携して,立体模型プロジェクトの拡大・深化を推進します.

数学曲面ボヘミアンドーム結晶学教材プランクトン(放散虫)の骨格模型火星儀
図5.開発した立体模型.左から順に、数学曲面ボヘミアンドーム(*4)、
結晶学教材(*5)、プランクトン(放散虫)の骨格模型(*6)、火星儀(*7)

(3-2) 立体模型の高機能化

 これまで開発した立体模型は,いずれも静的な模型です.今後,立体模型がヒトの動きに反応する仕組みを加え,立体模型の高機能化をおこなう予定です.例えば,模型に触ると光や音を発する等です.これにより,立体模型の活用の場面がさらに広がることが期待されます.

文献および共同研究者

  • (*1) Y. Teshima and T. Matsumoto, GLASS PHYSICS AND CHEMISTRY,38-1,(2012) pp.49-54, 松本崧生博士(金沢大学名誉教授)との共同研究。
  • (*2) Y. Teshima and T. Matsumoto, GLASS PHYSICS AND CHEMISTRY,38-1,(2012) pp.41-48, 松本崧生博士との共同研究。 Y. Teshima Y. Watanabe, and T. Ogawa, Lecture Note in Computer Science, Vol. 2098, (2001) pp.351-361, 小川泰博士(筑波大学名誉教授)および渡辺慶規博士との共同研究。
  • (*3) 科研費・基盤(A)、研究代表者:手嶋吉法、研究分担者:池上祐司(理化学研究所)、大内進(特別支援教育総合研究所)、金子健(特別支援教育総合研究所)、藤芳衛(大学入試センター)、山澤健二(理化学研究所)、渡辺 泰成(帝京平成大学教授)※研究分担者の所属機関名は2006年4月時点。
  • (*4) Y. Teshima and T. Ogawa, Journal of the International Society for the Interdisciplinary Study of Symmetry, 1-4, (2010) pp.298-301 小川泰博士との共同研究。
  • (*5) 渡辺泰成博士および松本崧生博士との共同研究。
  • (*6) Y. Teshima, A. Matsuoka, M. Fujiyoshi, Y. Ikegami, T. Kaneko, S. Oouchi, Y. Watanabe, K. Yamazawa, LECTURE NOTES IN COMPUTER SCIENCE, 6180, (2010) pp.523-526 松岡篤博士(新潟大学教授)との共同研究。CT撮影(SkyScan1172)は株式会社東陽テクニカのご厚意に拠る。
  • (*7) 中野司博士(産業技術総合研究所)および田中明子博士(産業技術総合研究所)との共同研究。

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