平塚 健一教授
研究室
(キーワード:トライボロジー・マイクロシステム)
トライボロジーは,図1に示したように諸学問の境界領域に存在しているため,個々の学問分野からの単独のアプローチではその本質を究めがたいという特質を持っています.そこで本研究室では,摩擦に伴う諸現象を複合的にその場でとらえる手法を用い,固体接触した物体がこすれ合う,または転がり合う際に生じる,機械的作用,物理現象,化学現象,材料学的変化を総合的に研究することによって,トライボロジーのより深い理解を目指しています.
図2に示した研究分野マップの中でも,摩擦化学反応や摩擦触媒反応を質量分析計で計測する「トライボケミストリー」分野,摩擦に伴う帯電,発光,エキソ電子放出を電気的に計測する「トライボエレクトロニクス」分野,摩耗粉の生成過程を電子顕微鏡で観察したり,ツィンリング式摩擦試験機によって数10nmの摩耗量を計測する「トライボマテリアル」分野は相互に密接に関わっており,学生同士の分野を超えた議論によって,電磁気的作用,化学反応,摩耗粉生成の相互関係を明らかにしています.
摩擦についてはその力の発生起源を探る研究をしています.吸着水の影響や原子間距離や結晶方位によって摩擦が桁違いに変化することを見出しています.
摩擦現象は楽器の演奏にも密接に関わっています.特にクラシックギターのように弦を直接爪で弾く場合,爪と弦との摩擦で音が決定されます.高速度カメラで弦が爪の上を滑る様子を観察し,効果的な演奏法の開拓を目指しています.
図1 トライボロジーの特徴
図2 研究分野マップ