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研究室紹介

井上 泰志教授

研究室の概要

(キーワード:材料物理学,ナノテクノロジー,無機材料・物性,薄膜・表面物性,プラズマ科学)

 本研究室は,物質の物理的性質に基づき,ナノテクノロジーを駆使することによって,新しい機能性材料や材料プロセスを研究・開発し,社会の持続的発展に貢献することを目指します.

研究テーマ

1. 新奇金属窒化物薄膜の創製

 「プラズマ」とは,気体にエネルギーを投入して分子の一部を電離させ,中性粒子,正電荷粒子(イオン),負電荷粒子(電子)を混在させた状態のことを言います.電子はイオンに比べて圧倒的に軽いので,低圧のプラズマ中では,電子とイオンで速度(エネルギー)分布が大きく異なってきます(非平衡状態).電子は大きなエネルギーを持つので,気体分子の解離や電離などを惹き起こし,化学的反応性を活性化します.一方で気体粒子はエネルギーが低いので,プロセス全体は低温で進行します.

 本研究は,低圧非平衡窒素プラズマを利用して,自然界に存在しない新奇な金属窒化物を成膜し,その構造や各種物性を明らかにするとともに,新材料として応用の可能性を探ります.

図1:新奇金属窒化物薄膜の創製
図1:新奇金属窒化物薄膜の創製

2. プラズマ過程のその場計測

 プラズマの中では,数10eV以上にもわたる,非常に幅広いエネルギー分布を持つ電子によって,気体粒子が様々な反応を起こします.通常の化学反応(熱力学的に平衡状態での反応)では決して得られない,特異な反応生成物を期待できます.一方で,プラズマ中の反応過程は非常に複雑なため,何が起こっているのかよくわかっていないことがほとんどです.広範な工業分野で,すでにプラズマ環境は実用に供されていますが,反応過程が不明なため,プラズマ環境の制御は非常に困難です.

 本研究は,プラズマプロセスにおいて,どんな気相/表面反応が進行しているのか,分光学的その場計測手法と表面・薄膜評価手法を駆使し,総合的にプラズマ中の反応過程を解析します.

図2:プラズマ成膜過程のその場計測
図2:プラズマ成膜過程のその場計測

3. 吸着誘起型エレクトロクロミック材料

 「エレクトロクロミック(EC)」とは,電荷の出入りに従って,可逆的に物質の色が変化する現象のことです.酸化タングステンが代表的な無機系EC材料として知られ,光透過率を任意に制御できるサングラスや窓ガラス,強い光で照らされると自動的に反射率を落とす防眩ミラーなどに実用化されています.最近,表面吸着物の交代に伴って色が可逆的に変化する,新しいタイプのEC現象が発見されました.従来型EC材料では,材料内部へのイオンの出入りが色変化の起源なので,根本的に色変化応答が早くできません.一方で,吸着誘起型ECは,表面のみが関与するので,素早い応答速度が期待できます.

 本研究は,吸着誘起型EC現象の原理解明と,EC特性の向上と多様化のための基礎的な研究を行います.

図3:吸着誘起型エレクトロクロミック
図3:吸着誘起型エレクトロクロミック

4. バイオミメティックEC薄膜材料

 「バイオミメティック」とは,生物が持つ優れた機能を,人工的に模倣しようとする科学的概念の一つです.吸着誘起型EC材料の特性を向上させるために,材料の表面積を増やす,というシンプルな方針を考えます.表面積の増大により,機能向上に成功している生体組織の例として,動物の小腸内壁を構成する細胞が持つ,細胞壁の微絨毛構造があります.この構造は,小腸内を流れる消化物から栄養素を吸収し,それらを血管網やリンパ管網へ輸送することに対し,最適化が終了しています.

 そこで本研究は,この微絨毛組織を模倣することにより,吸着誘起型EC材料の特性を飛躍的に向上し,環境調和型調光材料としての工業的応用を目指します.

図4:バイオミメティックEC薄膜
図4:バイオミメティックEC薄膜

5. 極微量蛍光物質検出法の開発

 石油や石炭などの化石燃料を使用しない原子力発電が,社会の一次エネルギー源として,世界中で再評価されつつありますが,原子力発電施設から出る低レベル放射性廃棄物の保管場所の不足が問題となっています.そこで,廃棄物からウランを除染し,一般廃棄物とすることが提案されています.そのために,廃棄物のどこにどれだけのウランが付着しているかを検出する手法が必要ですが,現在実用されている,放射線量を計測するカウンターでは,能力的に不十分です.

 本研究は,レーザー照射により発生する固有の励起光を利用し,固体表面上や液体中の極微量ウランを,高感度・高精度・高速度で非接触検出する計測方法の開発研究を行います.

図5:極微量蛍光物質検出法の開発
図5:極微量蛍光物質検出法の開発

6. リン資源の回収と機能性材料化

 「リン」は,植物を含むすべての生物にとって必須の元素であり,現在の高生産性農業を支えているのが,リン鉱石から生産される化学肥料です.リンは地球上でそれほど希少な元素ではありませんが,肥料として莫大な量が消費されてきたため,近年,リン鉱石の枯渇が心配されています.日本にはリン鉱石の鉱山がなく,100%を輸入に頼っていますが,実は下水道の汚泥中に,大量のリンがリン酸の形で存在しています.下水汚泥は基本的に焼却減容後に最終処分場に埋めており,実にもったいない話です.

 本研究は,汚泥焼却灰中のリン成分を資源化するため,亜臨界水を利用した新規リン資源回収法を開発します.さらに,回収したリンを新機能性材料として応用する研究を行います.

図6:リン資源の回収と機能性材料化
図6:リン資源の回収と機能性材料化

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