加藤 琢真准教授
加藤研究室
(キーワード:流体力学・流体工学)
流れと物体が干渉する流れ場は非常に複雑であるが,移動物体や流体機械にかかる流体抵抗,騒音・振動など,工学的な応用範囲が広く,流れ場の解明が重要となる.本研究室では,流体抵抗の最小化,効率の最大化を目指して,流れ場計測および現象解明を行う.以下に,現在行われているいくつかの研究例を示す.
1.回転円板間の流れ
円板表面の流れ場のPIV解析
回転円板間の流れは,ハードディスクやターボ機械,オートマチックトランスミッション内などで見られるが,狭い空間で遠心力が作用することにより非常に複雑になっている.本研究では,オートマチックトランスミッション内流れの効率化を目指し,回転二円板間流れについて,クラッチ表面形状等を変化させて可視化計測を行う.
2.球体周りの流れ
球体周りの流れは,形状の単純さとは逆に非常に複雑になり,実験および数値解析が非常に困難である.特に,球技のボールは特有の表面形状を持って流体中を飛翔するため,流体力学上非常に興味深い流れ場が発生する.様々な表面形状を有する球体周りの流れ場を計測し,その現象を解明することは,流体工学のみならず,スポーツ工学の観点からも重要となる.
野球ボールの回転軸の傾きによる力の変化
3.翼周りの流れ
翼が流れに対してある程度以上の迎角になると,流れのはく離という現象が発生する.はく離が発生すると流体機器や翼の性能が著しく低下するため,様々な手法を用いて流れのはく離を抑制し,性能低下を防ぐ対策が必要となる.また,翼が地面付近を移動すると,翼と地面,およびその間の流れが干渉する地面効果と呼ばれる現象が発生する.地面効果はいい影響もある反面,好ましくない影響もあるため,その特性の変化を調査し制御を試みる.
迎角変化の速度による揚力係数の変化
4.流体騒音
流体騒音とは,流体運動が原因で発生する音のことであり,いわゆる風切り音などが含まれる.これらは人の耳にとっては耳障りな音が多く,抑制することが必要となる.従来の研究では,物体の表面形状を変更したり,物体を動かしたりすることで制御を行っていた.本研究では,表面に溝加工を施したり,物体を回転振動させたりした場合の流体騒音の挙動を流れ場と関連付けて解析する.
円柱上の溝の位置による騒音計の周波数分布