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研究室紹介

丸山 広樹助教

研究室

(キーワード:機械要素・トライボロジー・機械設計)

 近年のめざましい技術展開は,機械を取巻く環境を大きく拡大させた.真空中や薬液中またはそれが飛散する環境もその一例である.電子部品の製造工程でみられるような硫酸・硝酸・フッ酸などの強酸液の飛沫に常にさらされる環境下では,鉄鋼材を中心とした金属材料をそのまま使用することはできない.また,滑ったり・転がったりする摺動状態では,金属材料は潤滑を必要不可欠とするが,高真空中では潤滑油が常温で気化してしまい,その役割を果たせなくなる.

 このような条件の厳しい特殊環境下に適用できる材料として注目されているものの一つが“プラスチック”である.しかし,プラスチックが工業材料として使われ始めた歴史は浅く,機械設計に十分な物性値も提示されていない現況にある.そのため,プラスチック材料を用いた機械要素の信頼性を疑問視する向きも少なくない.

図1 耐薬品製に優れた玉軸受
図1 耐薬品製に優れた玉軸受

 このような背景の中,研究室では,適材を適所に供給して有効に活用する省エネ設計の思想に合致したプラスチック機械要素の開発研究を手掛けている.中でも,特殊環境に適用できるプラスチック転がり軸受や歯車の作動特性を明らかにし,信頼性を確保し得る設計手法を構築することが現在のおもなテーマである.図1はプラスチック・メーカと共同で開発した耐薬品仕様のプラスチック転がり軸受の一例である.そして,卒業研究では以下のようなテーマを設けている.

①PEEK玉軸受の負荷能力向上と寿命延長

図2 軌道に発生した剥離
図2 軌道に発生した剥離

 PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は,極めて優れた耐薬品性と耐熱性,高い強度と剛性を有する熱可塑性プラスチックである.この材料で軌道輪を構成する転がり軸受は,電子部品の製造工程のような過酷な環境で作動する機械に組み込まれる特殊軸受として需要が広がっている.しかし,この軸受を潤滑下で運転すると,図2のように軌道に剥離が発生して,期待するほどの負荷能力が得られないことがわかっている.そこで,この剥離がどのようなメカニズムで発生するかを明らかにして,剥離の発生を抑制する方法を検討し,軸受の負荷能力向上と寿命延長をはかることがこのテーマの目標である.

②繊維強化PEEK軸受の作動特性

図3 繊維充PEEK軸受の剥離
図3 繊維充PEEK軸受の剥離

 PEEKに炭素繊維を充填した複合材で軌道輪を構成する玉軸受の軌道にも,図3のように剥離が発生する.しかし,この剥離は深さ方向に進展することはなく,その後の運転を継続することもできる.そこで,剥離が発生した軸受の回転抵抗,振動・騒音,軌道面の摩耗などの諸特性が運転経時とともにどのように変化するかを調べ,その結果からこの軸受の寿命を評価し,設計手法を提案することがこのテーマの目標である.

③繊維強化PEEK歯車の寿命設計法の確立

図4 PEEK歯車
図4 PEEK歯車

 炭素繊維やガラス繊維を充填したPEEKで製作した歯車(図4)を潤滑下で運転すると,歯面にピッチング(剥離)が発生することがわかっている.しかし,このピットは深さ方向に進展することはなく,歯車は歯が折損するまで運転を継続することができる.このテーマでは,ピッチングが歯車性能に及ぼす影響を確認するとともに,歯の折損寿命に関する設計法を確立することを目標とする.

④汎用型歯車耐久試験機の設計・製作

図5 歯車耐久試験機
図5 歯車耐久試験機

 一般に多用される歯車の耐久試験機は,負荷方法の違いによって動力吸収式と動力循環式に大別できる.動力吸収式は,電動機で発生した動力をブレーキで吸収するために消費電力が大きくなる反面,装置の操作を簡単にすることができる.一方,動力循環式は,装置の損失動力を電動機から供給するために消費電力を小さくできる反面,負荷操作に煩わしい作業が要求される.このテーマでは,簡単なハンドル操作で運転中に負荷調整のできる動力循環式の省エネ構造(図5)を基本として,これに歯車の運転特性の変化や損傷を検出できる機能を搭載した装置を設計・製作することを目標とする.

⑤高温環境用転がり-滑り円筒摩擦試験機の設計・製作

 一般に摺動を伴う機械要素の開発では,試作品を用いた実機試験でその摺動特性を評価することが多い.しかし,開発の検討段階で試作品を製作して実機試験をすると時間やコストがかさみ,必ずしも効率的な方法とはならない.そこで,摺動状態を円筒面の接触による純転がりまたは転がり-滑りの状態に置き換えて摺動試験のできる装置が有用となる.このテーマでは,高機能プラスチック円筒を高温環境下で転がり-滑り接触できる摩擦試験機を設計・製作し,接触面に剥離の発生を再現することを目標とする.

⑥セラミック転がり軸受の運転特性

 (プラスチック材料ではないが)セラミック材ですべての要素を構成する転がり軸受は,すでに開発が進められ極限られた用途で実用されている.しかし,コストパフォーマンスの問題から用途拡大が躊躇され,その運転特性に関する報告例は皆無に等しい.近年,外国製のセラミック玉軸受が安価に購入できるようになり,特殊環境下に適用したいとする向きが高まってきている.そこで,このテーマでは,セラミック玉軸受の運転試験装置を設計・製作し,その運転試験から軸受の基本的特性を明らかにすることを目標とする.

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