永井 崇准教授
研究室概要
(キーワード:リサイクル,鉄・非鉄精錬,高温プロセッシング)
本研究室では,化学熱力学および反応速度論などをベースに,各種金属や半導体素材製造プロセスの環境負荷低減や画期的なリサイクルプロセスを開発することを目的とし,特に高温での化学反応ならびに各種物質の挙動に関する研究を行う.
研究テーマ
1. 有価金属の回収プロセス
自動車排ガス浄化触媒や電子基板・コネクター類などには,金(Au)や白金族金属(Pt, Pd, Rh)などの貴金属が使用されている.これらの使用済み製品から,貴金属を効率よく回収することができ,低環境負荷,低コストで実現可能なリサイクルプロセスを開発する.
強力永久磁石(Nd-Fe-B-(Dy)),ニッケル水素二次電池の水素吸蔵合金(LaNi5),リチウムイオン二次電池などからの希土類元素(レアアース),ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)の回収プロセスや鉄・非鉄精錬から副産物として排出されるスラグ・ダストなどから,リン(P),マンガン(Mn),亜鉛(Zn)といった有価物を回収する手法の開発に取り組む.
2. 質量分析法による物理化学測定
リサイクルプロセスの設計・開発や既存の材料製造プロセスの最適化(省エネルギー化・省資源化)には,正確な熱力学データが必要不可欠である.これまでも,様々な手法を用いて熱力学測定が行われてきたが,特に希土類元素含有合金や貴金属,複合酸化物(スラグ)などの測定が難しい物質や合金・スラグ系の熱力学データはまだまだ不足しているのが現状である.本研究室では,新しい熱力学測定法としてクヌーセンセル-質量分析法を開発し,これを用いて前述したリサイクルプロセスの開発に必要となる熱力学データを測定する.
この手法では,凝縮相(固体および液体)と平衡する蒸気種とその分圧を調査することができる.これより,試料の蒸気圧, 活量, 生成自由エネルギーなどの各物質の熱力学諸量や各種化学反応の自由エネルギー変化(⊿G0)などを見積もことができる.これらを明らかにすることで,ある条件下で,どのような化学反応進み,進まないのかを知ることができる.
これらをもとに,プロセスの設計・改良やリサイクル手法の提案などを行う.
高温質量分析装置
3. 鉄・非鉄金属精錬プロセスの諸問題の解決
我々の快適な生活は,様々な金属材料によって支えられており,その金属の多くは我が国各地の精錬所で生産されている.今日においても,環境規制,鉱石の低品位化・微粉化,スラグ・ダスト類の発生量削減,有害副産物の安定化処理,CO2発生量の削減など解決すべき課題は多い.本研究室では,プロセス全体を考慮し,有益な基礎研究を行うことでこれらの課題解決に貢献する.