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研究室紹介

小澤 俊平准教授

研究室概要

(キーワード:金属融体熱物性,新準安定相探索,無容器材料プロセス,極低雰囲気酸素分圧,過冷却)

 本研究室では,金属材料を浮遊させた状態で溶かしたり,その状態から結晶成長させたりできる「無容器プロセス」と呼ばれる技術や,雰囲気中の酸素が極めて少ない「極低酸素分圧環境」を駆使し,これまでに無い新しい機能や特性を持った材料の開発や,従来よりも高精度な熱物性測定に関する研究を行う.これらの研究は,国内外の大学,研究所,企業と共同研究で行っており,現在金属材料分野で問題となっている課題の解決や,未知の現象の解明を目的としている.

研究テーマ

1.過冷却を利用した新しい準安定相の生成

図1 航空機の放物線飛行による微小重力環境.ペットボトルや人が宙に浮いている
図1 航空機の放物線飛行による微小重力環境.ペットボトルや人が宙に浮いている

 無重力状態では,図1に示すように物が空中に浮遊する.しかし最近では,多くの研究者や研究機関の努力によって,地上でも金属材料を無容器浮遊させることが実現可能となった.その代表的なものが,図2に示す電磁浮遊技術である.この方法では,上下逆向きに巻かれたコイルに高周波交流電流を流すと,交流磁場が発生し,その中心に置かれた金属材料の表面では,赤道に沿って円環状の電流が生じる.その結果,フレミング左手の法則から,試料はローレンツ力によって浮遊する.

 金属や半導体を浮遊させた状態で溶融すると,容器からの汚染を完全に防ぐことが出来るため,高純度な材料を得ることが出来る.また,融点以下になっても固まらない「過冷却」と呼ばれる現象が生じる(図3).溶けた合金をこの過冷却状態から結晶成長させると,通常とは異なる新しい材料が生成する可能性がある. 本研究では,この手法を利用して,新しい金属材料の探索および開発を行う.

図2 電磁浮遊の原理(左)と浮遊する高温金属液滴(右)
図2 電磁浮遊の原理(左)と浮遊する高温金属液滴(右)

図3 過冷却している水.-7℃でも凍らず水のままである
図3 過冷却している水.-7℃でも凍らず水のままである

2.無容器プロセスによる高精度熱物性計測

図4 溶接シミュレーション
図4 溶接シミュレーション

図5 産業界から求められる熱物性値(シリコンの例)
図5 産業界から求められる熱物性値(シリコンの例)

 半導体の結晶成長や,自動車ボディの信頼性溶接,ジェットエンジンタービン翼の精密鋳造などの各種高温融体プロセスを最適化するために,近年では図4のようなコンピュータシミュレーションが必須となっている.信頼できるシミュレーション結果を得るために,産業界からはパラメータとなる正確な熱物性値(例えば表面張力,密度,熱伝導率など)が強く求められている(図5).しかし金属融体は,高温で測定治具と化学反応を起こすため,測定自体が困難な問題がある.特に表面張力は,ほんの僅かな表面活性元素に敏感に影響されるため,測定が非常に難しい.

 本研究では,先に述べた電磁浮遊技術(図2)や,航空機の放物線飛行を利用した無重力環境(図1,6)を使って,容器からの汚染を完全に抑制し,従来よりも高温までの正確な熱物性計測に関する研究を行う.また,表面活性元素である酸素を精密に制御し,世界でも殆ど報告されていない,図7のような表面張力-温度-酸素の関係を明らかにする.

図6 航空機の放物線飛行と重力の関係.約20秒の無重力環境が得られる
図6 航空機の放物線飛行と重力の関係.約20秒の無重力環境が得られる

図7 金属融体の表面張力-温度-酸素分圧の関係
図7 金属融体の表面張力-温度-酸素分圧の関係

3.極低酸素分圧下における新材料開発

 金属や合金は,単に溶かして固めただけでは,組織や結晶構造が均質ではなく,製品として使えない場合が多い.そこで,組織や結晶構造の調整を行うための方法の一つとして,しばしば高温での熱処理が用いられる.また熱処理は,機械加工後の材料や,金属粉末を用いたプレス成形体にも施される.しかし,アルミニウム,マグネシウム,クロム,希土類などの元素を多く含む材料では,高温の熱処理によって表面が酸化して,逆に材料の欠陥を引き起こす問題がある.

 本研究では,材料の酸化を抑制出来る極低酸素分圧環境を得るための手段として,高性能ジルコニア式酸素ポンプ(図7)の開発および検証を行う. またこの装置を用いた極低酸素分圧環境下で,材料の熱処理や加工を行い,新しい材料プロセスと新材料の開発を試みる.

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