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研究室紹介

坂本 幸弘教授

プラズマを用いた精密除去・付加加工技術

(キーワード:真空工学,薄膜,表面工学)

1.はじめに

 プラズマという言葉は何度か聞いたことはあるかと思いますが,辞書によれば“自由に運動する正負の荷電粒子が混在して全体として電気的中性となっている物質の状態.気体放電によって気体分子が高度に電離した状態や,星の内部・星間空間にある物質の状態の他,半導体内の電子と正孔の集団もプラズマと考えられる.”(辞林21)といわれており,この状態を利用して材料を合成したり,薄膜形成したり,エッチングしたりという加工が行われており,現在の電気電子部品の作製には欠かせない技術の一つとなっております.

 当研究室ではイオン・ラジカルを用いた材料創製および精密除去付加加工技術を基に,プラズマ等のドライプロセスによる材料の高機能化を検討しています.具体的には,ダイヤモンド等の非平衡物質の合成や,窒化炭素といった天然には存在しない新奇材料の創製,得られた表面改質層や薄膜の応用の探索を行っています.当研究室で行っている研究の一部として,CVDダイヤモンドおよび窒化炭素の合成について紹介します.

2.CVDダイヤモンドの合成

 電子レンジと同じマイクロ波を用いて,炭素を含む材料ガスとH2またはO2を混合してプラズマ化すると,基板上にダイヤモンドが析出します.図1は,CO-H2系反応ガスよりSi基板上に合成したダイヤモンドの粒子です.サイズこそ小さいものの,その形は見事にダイヤモンドそのものです.純度は,天然のものと比較しても負けません.また,ダイヤモンド膜の合成も可能です.ダイヤモンドは天然物質中最も硬いという特性を有しているために工具としての応用が期待されています.また,最近の動向として,このCVDダイヤモンドの持つ負性電子親和力(真空にして負の電界を加えると電子が出るという特性)に着目した,FED(電界電子放出型ディスプレイ)が検討されています.

図1 CVDダイヤモンド粒子の走査型電子顕微鏡像
図1 CVDダイヤモンド粒子の走査型電子顕微鏡像

 また,CVDダイヤモンドは,上述の様に通常単結晶粒子や多結晶の膜状で得られます.そのため,電気的特性や熱伝導率等の構造敏感性ある特性は,単結晶ダイヤモンドに劣ることがあります.そこで,CVDダイヤモンドの高速合成に関する研究成果を生かして,板状や塊状のダイヤモンドの作製についても検討しています.CVDダイヤモンドは,通常宝石として珍重されている最も不純物含有の少ないⅡa型ダイヤモンドであるために,バルクとして応用することにより,ダイヤモンドの特性を更に応用することが可能になると考えられます.

3.窒化炭素の合成

 セラミックスの一つである窒化珪素の珪素(Si)の代わりに炭素(C)で置換すると,ダイヤモンドより硬い材料を作製できる可能性があるという計算報告がされてから,窒化炭素(C3N4)の合成に関する研究が行われてきました.また,結晶性でなくとも,窒素を含有することにより,高温での耐酸化性等の特性が改善されるといわれています.しかし,結晶性の窒化炭素の合成は困難であるとされていました.マイクロ波プラズマCVDによるCH4-N2系反応ガスからの窒化炭素の合成について検討した結果,CH4濃度の低い領域では結晶性の生成物が,CH4濃度の高い領域ではウイスカー状の生成物が形成することが明らかとなりました.図2に,CH4濃度;1%で作製した生成物のSEM像を示します.このCH4濃度の低い領域で生成した生成物は,オージェ電子分光分析では55%を越える窒素の含有が認められ,また,X線回折では,α-C3N4の形成が確認されました.

 電界電子放出特性は,前述のCVDダイヤモンドからの電界放出の数十から数百倍を示しており,今後,多方面への応用について検討していく予定です.

図2 得られた窒化炭素のSEM像
図2 得られた窒化炭素のSEM像

4.おわりに

 当研究室では,今後のものづくりに期待されている,分子原子レベルでの材料加工技術いわゆる“ナノテクノロジー”に通じる技術の一つである,イオン・ラジカルを用いた材料創製および精密除去・付加加工技術を研究しています.

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