田村 洋介准教授
研究室概要
(キーワード:軽金属材料,鋳造工学,材料加工,機械的性質)
本研究室では,金属材料の鋳造,加工,熱処理等による材料組織制御およびそれらによる新材料の開発を行っています.現在では主に「マグネシウム合金の機械的性質改善と信頼性の向上」および「メタルボンド材の剛性制御」等をテーマとし,新材料開発のための研究を進めています.
Keywords:金属材料,マグネシウム合金,鋳造,加工,熱処理,組織制御,機械的性質,メタルボンド
研究内容
1.マグネシウム合金は比重が1.73と小さく比強度が大きいため,近年,自動車材料として注目されています.現在のところ鋼やアルミニウム合金に比べると使用量は少ないものの,性能が重視されるモータスポーツの分野や欧米の高級車には一般に用いられています.
図1 凝固組織微細化の例
◆マグネシウム合金は塑性加工が難しいため,鋳造が最も基本的な加工プロセスとなります.図1は本研究室で溶製したMg-2LaおよびMg-2La-0.5Zr合金の凝固組織です.ジルコニウムをわずか0.5mass%添加することで組織は著しく微細化し,加工性と機械的性質が飛躍的に向上します.
◆金属材料は微量元素(不純物元素)によってその性質を大きく変えます.マグネシウム合金の場合も同様です.材料本来の性質を明らかにするためには,高純度マグネシウムを研究に用いる必要があります.図2は本研究室で製造した4Nのマグネシウムクラウンです.
図2 マグネシウムクラウン
図3 Mg-3Al-1Zn合金の応力‐ひずみ線図
マグネシウムクラウンを用いて溶製した高純度Mg-3Al-1Zn合金は,図3に示すように降伏点が低く延性に優れており,展伸用材料として同一組成の実用合金よりも優れています.
◆マグネシウムのリサイクルにおいて,銅が電線等から混入します.銅はマグネシウム合金の耐食性を害する元素です.しかし銅を積極的に利用した合金は,クリープ特性に優れていることが本研究で明らかとなりました.
2.メタルボンドダイヤモンドブレード(図4)は,半導体シリコンウエハ等の精密切断に不可欠で,目的により様々な性質が求められます.ダイヤモンド砥粒を固定するための金属材料を「メタルボンド」と言い,その性質がダイヤモンドブレードの性質を左右します.
図4 メタルボンドダイヤモンドブレード(市販品)
◆WC-Co超硬合金を基本とし,様々な物質を添加することによって「強さ」と「剛性」それぞれにおいてバランスのとれたメタルボンド材料の開発を目的に研究を行っています.図5は本研究室においてWC, Coおよび物質Xの混合粉末を長時間撹拌混合してから焼結したメタルボンドです.三点曲げ試験(図6)による評価で,物質Xの添加は縦弾性係数と抗折力を制御するのに適していることが明らかになりました.
図5 WC-Co-X焼結体
図6 曲げ試験