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研究室紹介

寺田 大将准教授

研究室概要

(キーワード:金属材料、構造用材料、材料組織、力学特性)

 我々の研究室は、鉄鋼材料やアルミニウムなどに代表される構造用金属材料を研究対象として、ナノ・ミクロンレベルの組織制御による「強さ(強度)」と「ねばさ(延性・靭性)」を両立させた高性能な構造材料の創製を目指しています。また、金属材料の強度は何に由来するのか、延性はどのようにして決定されるのかなど、金属の力学特性の発現メカニズムについて、基礎的な理解を目的とした研究も行っています。

研究テーマ

1.強度と延性を両立させた構造材料の創製

図1 従来の材料の強さ(強度)とねばさ(延性・靭性)の関係
図1 従来の材料の強さ(強度)とねばさ(延性・靭性)の関係

 我々の身の回りには大小さまざまな人工物が溢れています。橋やビルなどの建築物、自動車や飛行機のような輸送機器、さらには食器などの小物に至るまで、多くの人工物を形づくる材料として金属が用いられています。モノを形づくる材料のことを構造用材料と呼びます。構造用材料には、形を維持し、力が加わっても形が変わらないために「強さ(強度)」が求められます。同時に、力が加わっても壊れないような「ねばさ(延性・靭性)」も求められます。したがって、「強さ」と「ねばさ」を両立させた材料が優れた構造用材料と言えます。しかしながら、通常「強さ」と「ねばさ」はトレードオフの関係を示し、例えば強い材料ほど脆いのが一般的です(図1)。我々は、材料組織をナノ・マイクロレベルで制御することで、「強さ」と「ねばさ」を両立させた理想的な構造材料の創製を目指しています。

図2 熱処理により硬い結晶相と柔らかい結晶相が混在する組織を作りこんだ鉄鋼材料の組織
図2 熱処理により硬い結晶相と柔らかい結晶相が混在する組織を作りこんだ鉄鋼材料の組織

 例を挙げると、鉄鋼材料を用いた研究では、熱処理により硬い結晶相と柔らかい結晶相が混合した二相組織を材料中に作りこむことで、強度と延性の両立を目指しています。図2は、熱処理を施した鉄鋼材料の走査電子顕微鏡写真を示しており、白い部分が硬い結晶相、黒い部分が柔らかい結晶相を示しています。さらに、熱処理プロセスを変えることで、(a)のように硬い相が大きく島状に分布する組織と(b)のように硬い相が細かく網目状に分布する組織を作り分けることができます。これまでの研究により(b)の組織を作りこむことで、強度と延性を併せ持つ特性が発現することが明らかとなりました。

図3 Al-Ag-Sc合金の透過電子顕微鏡写真
図3 Al-Ag-Sc合金の透過電子顕微鏡写真

 図3は、アルミニウム(Al)に銀(Ag)とスカンジウム(Sc)を混ぜた材料の熱処理を施した材料の、電子顕微鏡写真を示しています。矢印で示しているのは直径約15nmのAl3Scの粒子、全体に分布する5nm程度の小さな点はAgクラスターと呼ばれるものです。このようなナノレベルの小さな粒子をアルミニウム内部に分散させることで強度と延性の両立を図っています。以上のように材料組織を制御することで、力学特性の改善を目指した研究を行っています。

2.ミクロな変形挙動とマクロな力学特性の関係

 実用に用いられている金属材料は結晶が集まった多結晶体です。多結晶体の変形は当然、個々の結晶の変形(ミクロな変形)によるものです。また、結晶の変形は不均一に生じます。そうした不均一な変形の重ね合わせの結果として、多結晶体の強度や延性(マクロな力学特性)が決定されます。したがって、個々の結晶の不均一なミクロな変形挙動を十分に理解し、マクロな力学特性に対してどのように影響するのか理解することが、理想的な力学特性を持つ材料を開発する上で重要な鍵となります。本研究室では、個々の結晶粒の変形を定量的に測定できるデジタル画像相関法などを利用し、結晶の不均一な変形とマクロな力学物性との関わりを基礎的に明らかにすることを目的として、研究を進めています。図4は、図2に示した硬い結晶(白色)と柔らかい結晶(黒色)が混在する材料を引張変形した時の結晶レベルの局所的な変形量を、分布として図2に重ねて示したものです。赤色は変形量が大きい部分、緑色は変形量が少ない部分を示しています。組織の違いにより、変形量の分布が異なることが分かります。このような結晶のミクロな変形挙動と多結晶体としてのマクロな力学特性の関係について研究していきます。

図4 デジタル画像相関法を用いて図2に示した材料を変形させた場合の局所的な変形量の分布
図4 デジタル画像相関法を用いて図2に示した材料を変形させた場合の局所的な変形量の分布

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